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2012年4月 5日 (木)

「すぐれた映画は決して嘘をつかない・・」

NHK BSプレミアムでやっている山田洋次監督が選んだ50本シリーズや

BSシネマの放送を録画して、見られるときに見ています。

そういう中で上の

「すぐれた映画は決して嘘をつかない・・」

という言葉を読んだとき、「そうだな~」と感じ入りました。

この言葉は池波正太郎の

『新 私の歳月』

の中にあったものです。

先日、家族の映画50本の最終作として『家族』という作品を放送していました。

倍賞千恵子・笠智衆・井川比佐志の出る昭和40年代が舞台の作品。

長崎から北海道の中標津に開拓民としてはいっていく物語。

見終わって、壮絶だけど、普通の人が普通の良心を持って

懸命に生活に立ち向かうとしたら、こうだろうな、と思った。

というのは、この3人、夫婦と、夫の父のあり方。

倍賞千恵子さんのお嫁さんの役が、義父を大切に思う気持ちが、

大げさすぎず、「普通」です。

それはつまり思いやりにあふれています。

東京で赤ん坊の早苗ちゃんが死んでしまい

疲れとかすかな後悔とから、夫が父親に、

一緒に来ていることを「いいと言った覚えばない」と言い出します。

そのとき、妻の倍賞千恵子さんが

「今の言い方はひどいわよ」

と、本気で怒っているところは、真剣で心の底からの思いがこもっていました。

赤ん坊の死がショックで倍賞千恵子の民子さんが寝込んでいる一日、

上野公園あたりを、おじいちゃんの笠智衆が孫のツヨシを連れて歩いています。

おまんじゅうを売っている茶店のようなところで、

売り子のおねえさんが何気なくツヨシにおまんじゅうを一つ包んで

「内緒ね」と言ってくれる場面。

ほしそうな顔をしていたといっても子どものこと。

何気なくくれるままにもらってしまいます。

笠智衆のおじいちゃんが、

「おまえは乞食じゃないんだぞ」と言って、お金を差し出し、ツヨシに持って行かせます。

たかがおまんじゅう一つだし、もらっちゃったんだから、

まあいっか・・というところでもあるけど、

そこの一線を絶対守るところが、いいかげんなわたしなどには、

昔気質というか田舎気質というかそういう感じもしましたけど、

見ていて気持ちいいもんでした。

そして、そのあとのなにげない数秒の流れに

いたく、いたく、感動しました。

今思い出しても涙が溢れ出てしまうくらいです。

日本映画の感動はこういうなにげない場面にあるんだと思います。

その数秒間は無言です。

せりふなんかありません。

ただ、子どものツヨシが、おじいちゃんからお金を受け取って、

茶店のおねえさんにお金を渡し、お釣りをもらってまた、おじいちゃんに渡すのです。

小走りに走っています。

おじいちゃんに「乞食じゃないんだぞ」と言われたといっても、

その諭し方はそんなに厳しい口調でもなく、

またツヨシがその意味をわかっていたかどうかもさだかではありません。

でも、ツヨシの顔は涙で濡れていたようにも見えました。

そうして、お釣りを渡すと、おじいちゃんはツヨシの手をとって

二人は連れ立って背中を見せて歩いていく・・・という場面です。

そのあたりまえさ。

静かさ。

人生の一断片を表しています。

悲しみに見舞われている家族。

最晩年に、それまで過ごした九州の島を離れて

北海道に渡らなければならない境遇になって、

その運命を黙って受け入れる老人の後ろ姿。

夕方、泊まっている旅館に戻り、民子さんに

「少しは眠れたか」と声をかける老人。

気持ちを伝えるのに言葉は少なくていいんだと、つくづく思う。

池波正太郎の上の言葉は

フランス映画のことを書いた中に出てくる。

池波さんが若い頃のフランス映画が表現した

フランス人とフランスの生活は日本のそれによく似ている、という文脈の中に。

本当の人間の姿や気持ちはどこの国でもおんなじなのだろう。

映画っていいな、と

こういうとき思う。

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